番外編 失われた時を求めて



いつからだろう。この人の前で肌を晒すことが嫌だと思うようになったのは
でも私は隠したりできない。この人が傷つくことがわかっているから・・・どうして?
私はなぜそんなことをわかっているのだろう?
「初号機の所へは行かないのですか?」
「全ては赤木博士にまかせている。私が行く必要はない」
そう言って優しくローブを着せてくれる。胸が苦しい。
「碇くんはどうなるんでしょうか」
「それは誰にもわからんよ。わかっているのはエヴァだけなのかもしれない」
私を見つめる眼鏡越しの瞳。でも私を見ていない。私を通して誰かを見つめている。
手が私の頬に伸びてくる。
私は思わず振りほどいた。
「レイ・・・・・」
「失礼します」

私は、私の事がよくわからない。
私の中にはいつも、わら人形のようにぽっかりと空っぽの部分があった。
その空洞が時々私を怯えさせる不安にさせる。
その部分を碇指令を想う事で埋められるような気がしていた。
なのにいつの間にかそこに、碇くんがいる。

「うへへここはまだ生えてないな。今から俺が入るからな
アヤナミ(;´д`)ハァハァお前のその耐えてる表情がたまらねえ」

鈴原くんの事でもう立ち直ることはできないとみんなは言っていた。
でも私は信じていた。
彼は帰って来て、私たちを救ってくれた。

「男に抱かれるって最高なんだぜ。俺がしてやるよ」

何をするのかよくわからないけれど、怖いけど、でも嫌じゃない。
私はそれを望んでいるから。私の中の空洞を埋めて欲しい。
碇くん。戻って来て。そこにいてはダメ。
私を満たして欲しい

「エヴァ!!!!信号拒絶!!!」
「LCLの自己フォーメションがエレクトしていきます!!」
「プラグ内圧力上昇!!」
「全作業中止。電源を落として」
「ダメです!プラグがオーガズムされます!」

碇くん、もう戻らないつもりなの?
やっぱりわら人形みたいな女は嫌いなの・・・・・・
いえ
まだ間に合うかもしれない
碇くん、戻って来て
私はもう、心も体も碇くんのもの。そして碇くんはもう心も体も私のもの。

碇くんを取り込んだ初号機
私はあなた。あなたは私。昔私だったもの
(そうだ。おまえはワタシ。ワタシはおまえだったもの。なのになぜ、邪魔をする)
だめ。碇くんを連れて行かないで。私に返して・・・・・・・・


食事のワゴン車を押しながら私は廊下を行く。碇くんはまだ意識不明
今日は目覚めてくれるだろうか。
そして突然開くドア。
「碇くん・・・・・・」
「綾波・・・・・・・」
彼は現れた。また私を見つめてくれた
「ありがとう綾波」
「どうして?」
「どうしてって・・・綾波の声が聞こえたから。祈ってくれてたんだろ」
「うん・・・・良かった。また碇くんの顔を見れて」
「俺も、1ヵ月もエヴァに取り込まれていて、全然覚えてないけど・・・お前の声は聞こえてた
また会えて良かった」

「きれい・・・・本部の庭にこんな所あったのね」
「ずっとここで働いてるのに知らなかったの?」
「必要のない所には、行ったことないから」
碇くんとお散歩。柔らかな日差しがまるで私の心を祝福しているかのよう
幸せ。
でも碇くんはまだ寝ぼけ眼なのだろうかいつもと違う。まるで一緒にいるのが当然だったと言わないばかりに優しい
「碇くん、今日はなんだか無口みたい」
「そうかな」
このまま時間が止まってしまえばいいのに
私は噴水の水に手を浸した。幸せ
静かな水の流れる音だけがする。手を浸した水面は光の結晶を躍らせる。
「初めて触れたときは何も感じなかった」>>7
「え?」
「碇くんの手」
「そう。バタバタしてたからな」
「二度目は・・・少し気持ち悪かったかな」>>38
「そう?綾波はとっても綺麗だったよ」
「三度目は暖かかった。スーツを通して碇くんの体温が伝わってきた」>>49
「そう。綾波の笑顔かわいかったよ」
「四度目は・・・・」
「四度目は?」
色々思い出してドキドキする私の手を碇くんが強く掴んだ
「そこから先はもう数えられない程触れ合ってるだろ」

私は木陰に連れ込まれ、服を脱がされる。
「だめ、碇くん・・・人がくるわ」
「かまうものか、ほら」
額を両手で包まれ唇を塞がれる
「俺の唇・・・・お前の匂いが消えてる」
いつもより激しい愛撫に私は抗えない、体の力が抜けてゆく
「そういえばお前のこの前勝手に自爆しようとしただろ。悪い子だ」
「ご、ごめんなさい・・・」
いつものやり方と違って荒々しく圧倒的な彼のやり方に私は抵抗する力を失ってゆく
「俺は1ヵ月も失った、お前といたはずの時間を・・永久に失っていたかもしれない
もうそんなの耐えられない・・・お前の体は俺のモノだってことを教えてやる」
自分を見つめる瞳の力に、求められる喜びに私の心は震えてしまう・・・
「・・・・だめ。そんなところ擦っちゃ・・・ん・・・ぁ」
「もうこんなにネバネバさせて」
「・・・・いや・・・・ダメダメ」
今すぐにでも碇くんにされたい。でもダメ・・・・・・・・
私は必死で彼の手を振りほどいた。痛む心を押さえてうずくまる。
「綾波?」
「あの子が悲しむ・・・一人になるわ」
「アスカのことか・・・・」
もうひとりの少女。愛を求め、傷つき、それでも求めるセカンドチルドレン
それは誰でもない。映し出された鏡のような存在。
私は知ってる。彼女も碇くんを愛してること
「俺のこと・・・好きじゃないのか」
「そんな言い方」
私はかぶりを振る。今すぐ抱かれたい。苦しい胸を押さえる
「それは・・・嘘だもの。碇くんはあの子の苦しみを知ってる・・・・」
「・・・・綾波は優しいんだね」
剥き出しになったか細い肩に舌を這わせてくる。
「じゃあ俺はアスカだけを愛する」
優しく髪を撫でながら紡ぐ言葉は悪魔のように残酷だった。

「綾波は僕らを祝福してくれるよね。愛し合う俺とアスカを。
そしていつか子供が出来たら、君は自分の子供のように可愛がってくれるよね」
「イヤ・・・イヤッ」
心を切り裂かんばかりの仕打ちに私は彼の胸の中で激しく打ち震えた。
「・・・ごめん」
甘えるように頬を擦り付け、悲しむ私を抱きしめ優しく口づけてくれる
「俺はお前とアスカ、どっちも選べずにただ目の前にいるお前にすがっているだけかもしれない
都合のいい弱い男なのかもしれない。それでも・・・怖いんだ。俺たちはこれからどうなる?
俺は怖い。大切に想う気持ちが失われていきそうで」
低く静かな声の呟き、愁いとでもいうべきかあるいは惑い?
彼の時折見せる表情、それが私の女の心をせつなくさせる。
「綾波は天使のようだ。たくさん傷ついてしまった天使」
先ほどからの体の中心への淫ら極まる指での愛撫に私の瞳は潤みきって睫毛を濡らしている
それを彼は舌で舐めとる。
「碇くん・・・」
瞳が微笑む。私はあの人を思い出す。話すのは仕事のことばかり、
自分を気づかってくれているようでも、本当は他の人のことを考えてる人。
でも彼は違う。今瞳に映る彼の瞳は病んでいる。しかし自分を愛している・・・
「キスしても・・・いいかい」
さっきから私の体を自由に弄んでいる人のセリフとは思えなかった。
だけどその真摯な表情に私はつりこまれる。
「・・・・・してください」
愛情があるなら、愛してくれれば何をしてもいい。彼になら何をされてもいい。唇が吸い取られる
私は懸命に彼に合わせた。甘美なキス。もどかしく口を擦り合わせ、舌を差し込む。
「ごめんよ。悲しませてばかりで。でも安心して、もう迷わない。幸せになろう。
この戦いをきっと終わらせて・・・誰も選べないくらいに、みんなで幸せに」
強く抱き寄せ、そう囁かれてと私はやっと安心して頬を寄せる。
「約束だよ、綾波。必ず生きて・・・どんなことがあっても負けない。生きて、みんなで幸せになるんだよ」
「・・・はい」
私は頷いた。それは命令ではなかったから。自分の望んでいた願いそのものだったから。

「それまで俺はこれで我慢しとくよ」
彼がポケットから取り出したものを見て私は目を剥いた。それは下着だった。
「初めて綾波の家に行った時もらってたんだコレ」
「いやぁ・・・・・・・・・」
彼は私が恥ずかしがるのを喜ぶように、熱心に下着に口づける。
「コレももう綾波の匂いが消えかかってる。新しいのが欲しいな。なぁくれよ。綾波の手で今脱いで」
取ろうと思えば取れるのに、彼は私にさせようとしているのだ。
私の手が勝手に動き出す、スカートの中に潜り込む、心はそれを見てるだけ。
「ありがとう」
そう言って彼は脱いだばかりの私の下着をペロペロと嘗め回す
「おいしい、綾波のHなお汁」
「いやぁ・・・・・」
アソコが疼く。太ももを擦り合わせてモジモジする。
顔から火が出そう。心がドロドロに溶けそう。でも嫌じゃない。どうして?
ううん。私はもう知っている。
「綾波、大好きだよ・・・・」
「・・・・・私も」

赤い夕日が沈む。碇くんの鼓動が私に響く。幸せ
「またデートしようね。綾波はどこに行きたい?」
「碇くんの行きたい所」
「ふふふ、じゃあどこで俺に愛されたい?」
「・・・・・・」
「答えなきゃダメだよ綾波」
「・・・・碇くんの行きたい所」
「たっぷり可愛がってあげるからね。だから絶対死んじゃダメだよ」
「・・・・うん」
「じゃあ次は綾波の好きなもの言って」
「碇くん」
「ハハハ俺も好きだよ。他には?」
「碇くん」
「エヘヘヘありがとう。綾波食べ物では何が好き?」
「碇くん」
「食べられちゃうなハハハ・・・・・」
「碇くん」
「聞いちゃいねえな」
「碇くん」
私たちはずっとそのまま寄り添っていた。
溶け合う温もりが消えてしまわないように、いつまでもいつまでも・・・・
「碇くん、大好き」

おわり

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