番外編 優しくって少しバカ
深夜2時 突然の地震に飛び起きる
「わわっっちょちょっと揺れ揺れてる」
タンスにしがみつくも振動で倒れそう。やっと少し治まったので
シンジの部屋に一目散に駆け出す
「バカシンジー地震シンジシンジ地震地震地震シンジ地震シンジ地震シンジ地震!
シンジ地震。地震シンジーシンジ地震!シンジ地震だって言ってるでしょ!おきなさいよ!!!!」
「わかったわかった、抱いてやるから」
「いやだから地震だってバカシンジ!じ!し!ん!」
「俺も信じてるよ、お前のシンジは自信を持ってお前を愛してるよ」
「寝言はいいから起きろよヽ(#゚Д゚)ノ┌┛Σ(ノ´Д`)ノ 」
「うにやぁぁ?なんだ?部屋がメチャクチャじゃねえか」
「だから言ってんでしょ!!!!!!!地震だって!!!早くなんとかしなさいよ!!!!!」
「わーったよ。とりあえず今2時か・・・モノが倒れてくっから隣の空き部屋に移動だ」
ベランダに行きシンジに肩車させて塀を越え隣のベランダへ降りる
「毛布と避難用リュックとラジオだ」
「痛っ!!!!投げてこないでよ」
「部屋に入れておけ」
「まったくアタシに命令しないでよね。ってなんで玄関から入ってこれるのよ
カギ持ってんなら先に言いなさいよ!!!!」
「これも訓練だよ」
「てゆうかどうして毛布一つなのよ・・・・」
壁に背をもたれて一つの毛布に包まるアタシたち
「コレが目的だったわけね・・・アンタ変な事したらぶっ殺すわよ」
「うんうん、若いうちくらい一緒にいようぜアスカ」
「気持ち悪い」
「朝になったらミサトも帰ってくる、少子化対策にはいい機会じゃね?」
「気持ち悪い」
「恋人同志のいい思い出にしようぜ」
「(゚Д゚)ハァ?アンタと私が?ドサクサに紛れて調子のいいこと言ってんじゃないわよ」
「じゃあ友達」
「友達って言うのは対等の立場の事言うのよ?」
「いつもご飯作ってんのに?」
「む・・・・」
「いつも掃除してクリーニング出して風呂掃除もトイレ掃除もなにから何までやってるのに
友達にもなれないんだ」
「むぅぅ・・・そうよアンタは私の下僕。アタシのために一生尽くすのよ」
「・・・・」
(ちょっと言い過ぎたかな・・・・でもダメよ。つけ上がらせちゃ)
肩寄せ合ってるシンジは放心したように黙り込んだ
「こんなに尽くしてるのに一生下僕なだけか・・・・」
「アンタが優等生とデートなんかしたりしてるからよ」
シンジの肩がピクッと動いた
(デートしてたんかい!!!!!!!!)
「・・・本当はさ。お前が家に来た時、俺出て行こうと思ってたんだ」
「へー今すぐでも遅くないわよ。それで優等生のところに行ったらいいんだわ」
「綾波の家にも行かない」
「フン。どうだか」
「怖くてたまらないんだ。大切な仲間を色恋沙汰で失うのが・・・」
「はぁ?自惚れもいいとこ」
「でも出て行けなかった。だって心配だったし料理もできないし」
「フン。偉そうに」
「それに楽しかったから」
バカはそう言って笑った。
「そおおおう。アンタはアタシの事好きなんだぁぁぁ」
「そうだよ」
「じゃあ優等生なんかと口聞くのやめなさいよ」
「それはできない(キッパリ)」
「なによそれ」
「だから言ったろ。色恋沙汰で失うのはヤなんだよ。戦友を。
今はみんな生き残ることが最優先事項だ」
「はんっ偽善的!!!」
アタシはなんかムショウに腹が立ってきた。だから手を握ってみる
「アンタは怖いだけじゃないの?悔しかったらやってみなさいよホラ」
体をねじって胸を押し付け、耳元で囁いてみる
「好きだったらできるでしょ。少子化対策」
「・・・・・・・・・」
暗闇で顔はわからないが確実に効果あったはず。
襲ってきたら股間を蹴り上げてアタシの勝ち
何もしなかったらさんざん罵倒してやってアタシの勝ち
動かない・・・まだ動かない・・・・動け、来い・・・
(もうじれったいわね。さっさとこっちに来なさいよ!)
腕がガバっとアタシの肩に回った
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
口元が耳に近づく・・・・・
ガブッ
「イター!!!!!痛い痛い離してよ!!!!!!!」
耳を噛まれた!!!!最悪!!!!
「ハハハ愛してるぜラングレー」
「気持ち悪い」
「おいアスカ起きろよ」
「んにゃぁぁぁ?」
外が明るい。朝だ。どうやらあのまま眠ったらしい
アタシは寝ぼけ眼で部屋に連れて行かれ着替えた。
バカがリュックサックを手渡して、心配だから優等生の家へ行くぞと言う
アタシは当然行かないと言い張った。しばらく言い争いが続いたが
バカは一人で行くと言った。アタシをここで一人にして優等生の家に行くのだ。
アタシは腕組してソッポを向いた。バカは玄関で靴を履く
「本当についてきてくれないの?」
「・・・・・・アタシのこと、もう外人て言わないって誓うなら行ってやってもいい」
「え?」
「あれって凄いムカツクの」
「わかった。言わない。誓うよ。だから一緒に行こう」
玄関を閉めてバカは扉に張り紙を貼った。
{綾波の家に行ってきます。碇シンジ アスカ}
「こうしておけばミサトが帰ってきても安心だ」
「いやそれはいいんだけど・・・つうかこれって、ねえ」
「さ、行こうぜ」
「ちょっとアタシの苗字・・・・まぁいいか」
ペンペンを抱きながら優等生の家へ向うアタシ達
町はそんなに被害はないようだが、なぜこのバカが近道なぞ知っているのか?
それになぜか嬉しそう。気に食わない。
そして目こすりながらYシャツ羽織っただけで出てきた優等生はもっと気に食わない・・・・・・
「なに?」
「綾波助けに来たよ。地震があったの知らない?」
「昨日徹夜で起動実験してたから・・・・」
「そうかそうか。でも無事でなにより」
馴れ馴れしい会話にイライラするのはなぜだろう?
アタシは殺風景な部屋をウロウロしながら自分の気持ちを抑えようとしていた。
「ほらこんな時はこんな顔するんだよ?」
優等生の顔を包んで指で表情を作っているシンジ。されるがままの優等生。
ゴミ箱を蹴っ飛ばすアタシ。
「カンパン持ってきたから食べたらいい。あと水も勿論持ってきたし」
「ありがと・・・」
アタシは台所の方でミサトや本部に電話していた。2人の会話を聞きたくなかった。
どうしようもない疎外感が襲ってくる。だけど繋がらない・・・
何度も何度も電話する。そう何かから逃げるように。
ふと気づくと優等生が台所に立っていた。まるで幽霊みたいな雰囲気で。
「紅茶って・・・どれくらい葉っぱを入れるのかな」
フン、それでウケを狙ってるつもり?
「紅茶ってあっても入れたことないから・・・」
だからなんなのよ。構って欲しいワケ?
「これくらいかな」
は?アタシに言ってるの?誰が返事をするものか・・・・
「あ」
ガチャン!!!!
マヌケな優等生がポットを倒しそうになった。
「大丈夫?」
「少し・・・・ヤケドしただけ」
「バカね!!!!!」
アタシは優等生の腕をつかみ、水道の水を捻った。
ザーっと流れる水の音を聞きながら、アタシは思った。
きっとこの女はバカなのだと。主体性のないまま流される古いダメな女
所詮利用価値が無くなるとゴミのように忘れ去られるオンナ。
そんなオンナに、いつも全力で干渉してくるスケベなバカシンジに抗う術などないのだろう・・・
すると、なんだかさっきまでイライラしていたのが嘘のように消えていった。
「紅茶・・・アタシが入れたげるからアンタはしばらくそうしてなさい」
アレ?水に流すってこう言うこと?
「きれいな色・・・紅茶入れるの上手ね」
「はん、当ったり前じゃない」
「飲んでもいい?」
「どうぞ、でもちょっとアンタには苦いかもね」
「ん・・・でも、暖かいわ」
「さて、あのバカにも持ってってやるか」
バカは寝ていた。優等生のベッドで・・・
「・・・・・・」
「夕べ寝てなかったらしいわ」
朝の光の中でスヤスヤ眠るバカとYシャツ羽織っただけで湯気立つ紅茶を飲む優等生・・・
「は、早く着替えてきなさいよ!!!!」
「どうして」
「どうしても!!!!!」
アタシは苦々しい気持ちを再び感じながらバカを見た。そしてふと気付いた。
(寝ていなかった?昨日・・・昨日寝るときアタシは・・・・そうかやっぱりこいつフフフ)
アタシは自分を祝うように笑った。敗北を勝利にかえた。いや元から負けてなんかいなかった。
そうやっぱりアタシは勝っていたのだ。
まだまだアタシの恋人なぞ100年早い、出来の悪い下僕。だってバカだから・・・。
そしてふと思い立って悪戯してやろうと油性ペンを取った。
書いた。この前シンジから借りたマンガのキャラクターに似せて。
「アハハハハほら優等生アンタもなんか落書きしなさいよ」
「うん」
「ん?なにこれ?」
「ハットリくん」
「アハハハハハハ」
アタシは寝顔に落書きされたバカを見ておかしくて笑った。
その時少しだけ笑った優等生を見て、なぜか少し嬉しい気分になった。
その後、そのまま本部に行ったバカはオデコに書かれた肉の字と
ホッペに書かれた渦巻きをみんなに笑われていた。
とても気分が良かった。
おわり
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