新世紀エヴァンゲリオン劇場版
















セミの鳴き声。水面の揺らめき。クレーターの湖面。なぎ倒された近代建築群。湖のほとりの人影、
碇シンジ。ひしゃげた電柱。安定を保っていた破片が何かの拍子で落ちた。湖面に落ちる破片
鏡面のように止まっていた水面に映りこんだ青空と太陽。傾き沈んだビルや瓦礫
波紋がゆっくり広がり、太陽を歪めクシャクシャにしていく


303号室、背中を向けて寝込んでいるアスカのベッドの脇で分厚いファイルを朗読するシンジ。
「『そしてシンジはレイの性器に硬直を挿入していった』・・・・・というのが俺の書いたエロ小説
{DEATH and REBIRTH(TRUE)2 シトシン星}なんだけどどうかなグヘヘヘヘ。知ってる人の名前を
使ってるけど、実はこれ地球によく似たシトシン星の地球人によく似たシトシン星人の小説だから
訴えられても大丈夫なの。でもミサトさんにも綾波にも読ませるのが怖いんだ。だからお前に読ま
せてるんだ。最低だろ俺って」
倒れこみ、すがるようにアスカを起こそうと肩を揺する
「なぁ起きろよぉ」
寝ているアスカの肩につかみかかるシンジの手。男っぽい乱暴な動きで細いアスカの肩をつかみ
揺さぶる
「目を覚ませよ。エロ小説朗読されてんだぞ。怒れよ」
かなり激しく揺り動かすシンジ。点滴も揺れる。アスカの上にのしかかるシンジ
「なに勝手に人の名前使ってエロ妄想を文書化してんのよっていつものように俺をバカにしてよ!」
アスカの首筋に涙が落ちる。力任せにアスカをこっちに向かせる。アスカの胸元が露になる。
心電図用のセンサーがベリッとはがれる
「・・・・・・・・・・・・・」
くるまっていたシーツが床に零れ落ちる。シーツが剥ぎ取られて太ももや胸元があらわになったアスカ
しかし無抵抗に眠っている。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
アスカの上着のボタンをとめていくシンジ。こっそりパンツに手を入れる。ほんの少し濡れた指先
「まだ生えてない」
ぺろっと指先を舐めてアスカの顔を覗きこむ
「女の喜びも知らないでこのまま死んでいくつもりかよ?アスカ」
何も答えないアスカ。綺麗に服を直しシーツをかけてやるシンジ
「そんな事は俺が許さない・・・・・・・・・小説、お前が起きるまで書いて書いて書きまくってやるからな、
覚悟しとけよ」
オデコに、頬に、唇に、顔中キスするシンジ。何も答えない無反応のアスカ
「また来る」
ドアが閉まる










第25話 「Air」

#1 残酷な天使のテーゼ
















発令所。茶呑み話に花を咲かせている青葉、日向、伊吹
「本部施設の出入りが全面禁止?」
「第一種警戒体制のままか?」
「なぜ?最後の使徒だったんでしょ?あの少年が」
「ああ、全ての使徒は消えたはずだ」
「今や平和になったって事じゃないのか」
「じゃここは?エヴァはどうなるの?先輩も今いないのに」
「ネルフは組織解体されると思う。俺たちがどうなるのか見当もつかないな」
「補完計画の発動まで自分たちで粘るしかないか」
「シンジくんと離れ離れになるのかなぁ・・・・」
「え?」
「え?」
「あ・・・・み、みんなと別れるのは辛いなあって・・・・・・アハ、アハアハ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」




第三新東京市を見下ろす峠のパークエリア。ハザードを出して停まっている車
「できそこないの群体としてすでに行きづまった人類を完全な単体としての生物へと人工進化させる
補完計画」
ハンドルを抱え込んでブツブツつぶやいているミサト
「まさに理想の世界ね。その為にまだ委員会は使うつもりなんだわ。アダムやネルフではなく。
あのエヴァを。加持くんの言うとおりにね」






「約束の時が来た。ロンギヌスの槍を失った今。リリスによる補完はできぬ。唯一リリスの分身たる
エヴァ初号機による遂行を願うぞ」
「ゼーレのシナリオとは違いますが」
「人は、エヴァを生み出す為にその存在があったのです」
「人は、新たな世界へと進むべきなのです。そのためのエヴァシリーズです」
「我等はヒトのカタチを捨ててまでエヴァという名の方舟に乗ることはない」
「これは通過儀式なのだ。閉塞した人類が再生するための」
「滅びの宿命は新生の喜びでもある」
「神もヒトも全ての生命が死をもってやがて一つになる為に」
「死は何も生みませんよ」
「死は君たちに与えよう」
「・・・ヒトは生きていこうとする所にその存在がある。それが自らエヴァに残った彼女の願いだからな」





目を覚ますレイ。顔にカーテンの隙間から月明かりが差し込む。ゆっくり起き上がるレイ。
カーテンの隙間から見える青い月。玄関のドアが閉まる。床の上、破壊されたメガネ。
砕けたレンズに月明かりが光る。






洞木家。主のいないベッドで一人眠るシンジ
止まっているS−DAT。手に持ったままのリモコン
起きているが生きていない表情
月明かりに当てられカギが光っている







夜明け。朝もやの中の芦ノ湖と第三新東京市






ネルフ本部。地下電算室。無数のパイロットランプが明滅している狭い隙間に座り込んで
作業しているミサト
「そうこれがセカンドインパクトの真意だったのね・・・気付かれた?」
床に置いてあった拳銃をパッと掴んで素早く持ち上げる
「いえ、違うか」
赤ランプが一斉に消える。
「始まるわね」














#2 THE BEAST

















警報鳴り響く発令所

「左は青の非常回線に切り替えろ。衛星を開いても構わん。そうだ。右の状況は?」
「外部との全ネット。情報回線が一方的に遮断されています」
「目的はマギか?」
「全ての外部端末からデータ浸入!マギへのハッキングを目指しています」
「やはりな。侵入者は松代のマギ2号か?」
「いえ、少なくともマギタイプ、5」
「ブラジル、クロアチア、オーストラリアからの侵入が確認できます」
「ゼーレは総力をあげているな。彼我兵力差は1対5。予選リーグ突破ラインは1勝1分1敗か、
分が悪いぞ」
「第4防壁突破されました」
「主データベース、閉鎖!ダメです!侵攻をカットできません!」
「さらに外殻部浸入!予備回路も阻止不能です!」
「まずいな。マギの占拠は本部のそれと同義だからな」

「わかってるわ。マギの自律防御でしょ」
「はい。詳しくは第2発令所の伊吹2尉からどうぞ」
「必要となったら捨てた女でも利用する。エゴイストな人ね」


司令部へと向うミサト
「状況は」
「おはようございます。先程第2東京からA−801が出ました」
「801?」
「特務機関ネルフの特例による法的保護の破棄及び指揮権の日本国政府への委譲。最後通告ですよ
ええそうです。現在マギがハッキングを受けてます。かなり押されています」
「伊吹です。今赤木博士がプロテクトの作業に入りました」
昇降機で上がってくるミサト
「リツコが?」



「私バカな事してる?ロジックじゃないものね。男と女は。そうでしょ。おばあちゃん」


「あと、どれくらい?」
「間に合いそうです。さすが赤木博士です。120ページ後半まであと1分。一時防壁展開まで
2分半程で終了しそうです」
「マギへの侵入だけ?そんな生易しい連中じゃないわ。多分」

「マギは前哨戦に過ぎん。奴らの目的は本部施設及び残るエヴァ2体の直接占拠だな」
「ああ、リリス、そしてアダムさえ我らにある」
「老人たちが焦るわけだ」

「マギへのハッキングが停止しました。Bダナン型防壁を展開。以後62時間は外部侵攻不能です」




「おばあちゃん、また後でね」





「碇はマギに対し第666プロテクトをかけた。この突破は容易ではない」
「マギの接収は中止せざるを得ないな」
「できうるだけ穏便に進めたかったのだが、いたしかたあるまい。本部施設の直接占拠を行う」




つづく

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